自分の時間を取り戻そう / ちきりん

【評価】

★★★★★

【感想】

生産性を高める意義について、事例を交えながら多面的に書かれている。

とても、腹落ちした本。

 

P23

忙しいという人たちの事例

1.【デキる男 正樹】 長い時間、働くことによって問題を解決しようとしている

2.【頑張る女 ケイコ】「とにかく頑張る」という思考停止モードに入ってしまっている

3.【休めない女 陽子】不安感が強すぎて、NOと言えなくなっている

4.【焦る起業家 勇二】すべてのことを「やるべきこと」と考え、全部やろうとしている。なにもかもが完璧にやろうとしている

 

P27

社会の高生産性シフト

 UberAirBnB 空き時間活用

 

P32

「生産性が上がる」とは、あらゆる資源の活用度合いが高まること、あらゆる資源が、今までより有効に使われ始めることを意味しています

 

P36-37

「生産性という観点から意味があるかどうか」を語っているのに対し、それに反対する人は「価値がゼロより上かどうか」だけに注目している、ということはよくあります。
公共工事の生産性の低さを指摘すると、「都会と地方の差をなくすためには、高速道路や新幹線が不可欠だ」とか「地方活性化のためには補助金が必要だ」と言います。そこには生産性の概念はありません。単に「新幹線や地方美術館の価値はゼロより上である」と言っているだけです。

 

P51

社会の高生産性シフトは、今に始まったことではなく、産業革命で入力と馬力が蒸気機関に置き換えられたときから始まっており、インターネットを始めとするデジタル技術で、スマホやドローンなどデジタル技術を活かすさまざまなハード開発で一気に拡大した。今後は、人工知能からIoT、遺伝子工学までさらに高生産性シフトを強力に推進するであろう技術が次々と実用レベルにまで降りてきています。

 

P52

生産性という視点で見るクセをつけないと、これからの社会において正しい方向性の判断ができなくなると思う。

 

P59

【頑張る女 ケイコ】生産性なんて上げても忙しくなるだけでしょ?

Answer:生活に必要な家事、食べていくのに必要な仕事などをできるだけ短い時間で終わらせ(=高い生産性)、残りの時間は家族と過ごしたり個人の趣味に使うというメリハリ型の生活を目指しましょう。
自分のやりたいことに使える時間、ゆったり休める時間を確保したい人ほど、しっかりと継続的に生産性を上げていきましょう。

 

P64

【デキる男 正樹】工場勤務ならわかるけど、クリエイティブな仕事に生産性は関係なさそう・・・

Answer:アーティストなどが森の中の別荘や海の近くのリゾートホテル、人の手が入っていない秘境エリアを訪れ、新しい着想を得ようとする。発想の転換に散歩する。このように、「クリエイティビティ」「ゼロから思考」「イノベーション」「ストレスを発散」といったことにも生産性の高い方法が存在するのです。
「自分が手に入れたいものを手に入れるために、もっとも生産性の高い方法はなんなのか?」を問い続けることで、生産性は高くなります。

 

P72-75

【休めない女 陽子】生産性なんて上げても得をするのは経営者だけでは?

アルバイトの突然のキャンセルや突然の残業など、「他人を犠牲にして自分の生産性を上げる」のは、正しい生産性の上げ方ではありません。正しい生産性の上げ方とは、資源を今より有効活用し、得られる成果(価値)の総量を増やすことです

 

P81-82

「昨日、夜中までかかった仕事を夕方5時までに終わらせようと思ったら、いったいどんな方法がありえたんだろう?」とは、振り返らない。だから同じことを何度も繰り返す。もしかすると、長時間にわたって働いた自分に「よく頑張ったなオレ!」的な達成感を感じているかもしれません。
熾烈な国際競争にさらされている製造部門はそうはいかなかった。
これからは、経理、法務、人事や営業部門なども外注化が進みます。ホワイトカラー部門で働く人達も、仕事の生産性を厳しく問われるようになるはずです。

 

P83

【フツーの男 良夫】生産性なんて上げても給料が上がるわけじゃないから、まったく意味が無い。自分だけ生産性を上げたりしたら、自分だけ仕事が増えるからイヤ!残業代が減るから仕事は遅いほうが得なんです!

これらの主張は、特定組織における最適化を目指しており、現在の労働環境や今の労働条件が前提になっている。家族のためにも、未来への最適化を目指し、生産性の高い労働市場で評価される人材を目指すべき。

 

P91

これからなくなる仕事は、「自動化しやすい仕事」ではありません。「機械に担当させれば、一気に生産性があがる」仕事です。「時間をかければ終わる仕事、残業さえすれば終わる仕事」は人間の仕事として残りません。

 

P92

最近、洋服をスマホで買う若い女性が増えています。このトレンドは、「実店舗で洋服を売る店員の提供価値が大して高くなかった」という厳しい現実を明らかにしました。

多彩な商品を前に、パーソナルスタイリストが同行し、着こなし方や素材の特徴を教えてくれるなど、アプリのリコメンド機能よりはるかに質の高い具体的なアドバイスがあれば、店員の提供価値も高いと言える。

 

P116

生活の生産性を上げるためには、今の自分にとってなにが希少な資源なのか、それを正確に理解すること。そして、その資源の無駄遣いに敏感になることです。

 

P130

「安定した生活が欲しい」といって大組織の会社員になった人の中にも、「たしかに安定は手に入ったけれど、特におもしろくもないこの仕事をあと何十年も続けるなんて、オレの人生は本当にこれでいいのか?」と疑問に感じ始める人がたくさんいます。

自分にとって「安定」は本当にもっとも手に入れたいものだったのか?そうやって思考停止せず考え続けることができれば、大して欲しくもなかったもののために希少資源を投じ続けることも避けられます。

私達はついつい「周りの人がみんなたっていること」や「やるのが当然だと(世間で)思われていること」を自分が手に入れたいモノだとか違いしがちです。

 

P146

インプットを用意に増やせる状況においては、誰も生産性を上げようとは思わない
しかし、インプットが減り始めると、とたんに生産性を上げる方法を考え始めるのです。

 

P150

「有給休暇を全部消化しなくても怒られない」「ノー残業デー以外の日は、少々残業をしても問題はない」という環境で働いていると、生産性を高めようという動機が働きません。今年の休暇を諦めることで=労働時間を増やすことで、問題が解決できてしまうからです。

 

P157-160

忙しくなる前に、さっさと休暇の予定を決めてしまおう。

自分で自分のお尻に火をつけることで、余裕が残っていては発揮できない力を自分から引き出せるのです。

休暇の予定を早めに入れる目的は「休暇を確実にとること」ではありません。目的は「自分と周りの人の生産性を高めること」です。そしてその目的を達成しながら、おまけとして休暇の取得も実現するのです。

 

P181

「どうでもいいような仕事」「優先順位の低い仕事」のなかには、「やれば終わる仕事」「時間をかければ必ずできる仕事」がたくさん含まれています。このため、全部をやろうとすると、ほとんどの人が最初に「やれば終わる仕事」に手をつけます。「どうせ全部の仕事をやらないといけない。だったら、まずはさっさと終わるものからやろう」と考えるからです。

 

P182

「全部やる必要がある」と考えている人の多くは、やれば終わることからやり始め、付加価値の低い仕事で仕事時間を埋め尽くしてしまいます。これでは肝心の重要な仕事では成果がでません。

 

P185

「りょうかい」とタイプして変換を押すと、「了解したしました。よろしくお願いいたします」と出てくるよう登録してあります。「せっかく」とタイプして変換すると、「せっかくお声掛けしていただきましたのに、貴意にそえず大変申し訳ございません。どうぞよろしくご理解のほど、お願い申し上げます。」と変換されます。

 

P189

「やらなくてもすむ方法が見つかったら、やめたい」と考えていても、いい方法がみつかることはありません。そうではなく、最初に「やらないと決めてから、やらなくて済む方法を考える」のが、時間を捻出するポイントなのです。

 

第8章 高生産性社会に生きる意味

P202

当時、スマホガラケーの長所と短所という形で詳細な比較が行われ、それに基づき日本でもスマホは定着するのか、という議論が行われていました。

でも、そんな細かい比較はどうでもいいんです。生産性という観点から見た時に、どれほど大幅な向上が実現するか。この一点だけを見れば、その商品やサービスが消費者に受け入れられるかどうかは判断できてしまいます。

P203

開始時点での少々の不便さや文化への不適合があっても、普及するのは圧倒的なレベルで生産性を向上させる商品やサービスであるというのが、社会の高生産性シフトなのです。

 

P214

高生産性のサービスが実現するかどうかは、国民の選択にかかっているのです。個人が生産性の高さを評価しない国では、社会の生産性も上がらないということです。

 

P216

大組織に勤める正社員についても、時間を投入することで乗り切るというインプット投入型の働き方からどう脱却するのか、そろそろ真剣に考え始める必要があるでしょう。

 

P221

寄せ集めプロジェクト成功の鍵

寄せ集めプロジェクトの課題 生産性の上げ方
無責任な発言が多く、議論が拡散して収束しない

民主的な運営を行わない

熱量とコミットを伴う発言は重く、とりあえず言ってみただけの傍観者発言は軽く扱う

全ての発言を平等に扱うという民主的なアプローチをとらない

最初は大いに盛り上がるが、その熱量が維持できない こまめにアウトプットを出すことでチームのやる気を維持する
上司がいないため、全員の意見が一致すること以外は決まらない

最初に意思決定プロセスを確立する

意見が一致するまで話し合いを続けることは不可能(それだと永久に議論を続ける必要が出てくる)という前提で、「誰がなにをどう決めるのか」を話し合い、合意しておく

意見を言う人はたくさんいるが動く人は少ない

行動の有無をメンバー絞り込みの基準とする

目的意識があり、自ら動く人だけを中心メンバーとして残していく

ノウハウや技術、専門性やネットワークなどを持つキーパーソンの巻き込みが難しい

キーパーソンに覚悟を示す

メンバー全員でコミット(あたなをおいて逃げ出したりはしないという覚悟)を示し、キーパーソンをチームに招く

時間的になかなか集まれず、コミュニケーションが進まない

コミュニケーションツールを使い分ける

順調に進んでいるときはメッセージアプリで、問題が起こったら電話(スカイプ)で解決する。また、リスクテイクをする決断の際には必ず集まるなど、コミュニケーションツールを意識的に使い分ける