ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う / 坂本貴志

【評価】★★★★★

【感想】
第一部では、主に50代からの直面する収入減や仕事に対するマインド等をデータを用いて可視化し、
第二部では、定年後の働き方の事例が紹介されている
共感や納得感のある内容となっていて、非常に面白く読める反面、自身の今後について考えさせられる。

P28 人生で最も稼ぎが必要な時期があって、それに応じて高い報酬が支払われる日本型の雇用慣行は実によくできた仕組みともいえる。
P29 教育費などがかさむ定年前にには高い給与を支払う代わりに、若年から中堅にあたっては実際のパフォーマンスに比して低い給与水準が設定される、
   こうした後払い賃金の仕組みは、経済学上も長期雇用のインセンティブを高める仕組みとして広く知られており、日本型雇用の根幹をなすものである
P31 壮年期には世帯で月60万円ほどの額が必要とされる労働収入であるが、定年後は年金に加えて月10万円ほど労働収入があれば家計は十分に回る

P129 定年前の人は自分や家族のために働いているという意識が強い。対して、定年後の就業者の多くは、直接的に誰かのために働くという事を大事に社会にしている傾向がある
P132 なぜ人は50代で仕事に対して意義を失い、迷う経験をするのか。これはつまるところ、定年を前にして「高い収入や栄誉」を追い求め続けるキャリアから転換しなければならないという事実に
   多くの人が直面しているからだと考えられる。
P134 定年を境に仕事の責任や権限が縮小し、短い労働時間で少額の収入を得る「小さな仕事」に従事している人の満足度が高い
P140 定年後の仕事を考えるうえで最も重要なことは、いかにして社会で通用する高い専門性を身に着けるかにあるわけではない。
    また、競争に勝ち残り、人に誇れるような仕事に就き続けることにあるわけでもない。
    定年後に豊かな仕事を行えるかどうかを決めるのは、この定年前後の意識の断絶をいかに乗り越えるかにあると考えるのである。
P154 人に誇れるような仕事に就きたいと考え、自身のキャリアを高めるための競争に日々明け暮れていたような人が、仕事を通じて体を動かすことが楽しいと言うようになる
P204 経験への過度な固執、大きな仕事への執着からの離別
P251 消費者の過度な要望に応えるといった消費者偏重の市場メカニズムが、働き続けるよりも、引退して純粋消費者になるほうが得をする社会を形成してしまっているのではないだろうか。
P253 働き手にやさしい労働環境を整えて初めて、歳を取ってまで働きたくないと考えている人たちを労働市場に呼び戻すことができる